Role: CG Supervisor
Responsibility:
supervision for all enviro and asset (except Morbius, Milo and Martine)
Review and assign tasks based on artist skills/abilities
R&D and develop new tools and workflow to create complex assets and shot
Organizing and optimizing pipeline with TDs
Split the sequences with other 2 CG supervisors. Tracking the shot tasks and help for the cross-department and location activities
VFX Production credits: Digital Domain
CLIENT : Sony Pictures
Director : Daniel Espinosa
In theater in April 1, 2022
https://www.artofvfx.com/morbius/
映画モービウスの紹介です。前回このHPを更新してから今回の更新まで3年近くかかってしまいました。それというのも、僕の担当分だけで2年近く製作期間を費やした上に、劇場公開が1年以上も伸びてしまったからなんですね。ちょうどこの仕事の追い込みに入った頃にコロナウィルスが流行し、あれよあれよと言う間にパンデミックになってしまい、僕の働く会社も驚くべきスピードでワーク・フロム・ホームに対応してしまいました。2020年の3月に自宅作業が始まって以降、このHPを更新している現在2022年6月まで、もうずっと自宅作業のZoom打ち合わせです。その間ごく一部の親しいスタッフと数回食事で顔を合わせた以外、全く直接のコンタクトを取らずに、インターネットを介したWeb上の打ち合わせだけでここまでやってきました。この非常時に、スケジュールに全く穴をあけることなく状況に対応した会社にも、不慣れな中、それこそ一晩でZoom打ち合わせ、レビューに対応したスタッフにも驚嘆しました。こんなことが起きるということも、自分たちにこんなことができるのだということも、これまで考えもしませんでした。
とはいえ、、、やはり僕はみんなと同じ職場で仕事がしたい。直接話し、ちょっとした合間を見てインタラクティブにアイデアを出し合い、短い時間を使ってトライ&エラーを繰り返す、その膨大な繰り返しの中でかできないものやことがあると思うんですね。特に残念なのは、会社でのレビューは、小さな単館映画館のような部屋のスクリーンに投影して行うんですが、暗い部屋で大きなスクリーンに映像を投影し、みんなで同じ場所に座ってレビューを繰返していた頃に比べて、自宅の小さなモニターで一人でチェックできることには、いくらZoomで画像を共有しているとは言っても、何かしらそれまでにはなかった制限があるように感じます。このプロジェクトに関して言えば、重要なディベロップメントがコロナ前に終わって、あとはショットを終わらせるだけというところまで来ていたので、とても幸運だったように思います。
さて、モービウスです。僕はスーパーヒーローものの映画やコミックの知識にはかなり疎いのですが、モービウスはスパイダーマンが絡むエピソードにおけるヴィランのようですね。映画スパイダーマンも新作が公開されて盛り上がっているようなので、このモービウスが今後どう絡んでいくのか楽しみです。疎いとはいっても、自分が関わる仕事はもちろん鑑賞しますし、それをきっかけにして情報を集めるようにもなります。
今回のVFXは作業分量が非常に多く、さらに多岐に渡ったため、かなり大きなチームを組み、詳細な作業分担がなされました。僕の上司が二人のメインキャラクターを担当し、僕を含めた三人のCGスーパバイザーが、シーケンススーパーバイザーとしてショット作業を3分割して分担しました。僕は担当のシーケンスの他、他のシーケンスを含めた全カットの背景、全ショットで使用される2人のメインキャラクター以外のアセット、それにライティング設計を担当しました。
まず背景は、多くをフルCGになることを前提に構築しました。プレートを流用できるカットもあったのですが、いつフルCGに切り替わってもいいように準備しました。こういったアクション映画では、アニメーションの方向性が突然変わって、背景が使えなくなるということが多々あるからです。破壊FXが絡むものや、近景で詳細なモデル、シェーディングやテクスチャリングが要求されるものはアセットチームに、スピードやフレキシビリティー、遠景のマットペイントなどが要求されるものはエンバイロメントチームに割り振って、レイアウトで共有しました。今回のチームは本当に強力で、ここまでの物量を要求されるプロジェクトとしては考えられないくらいにスムーズに作業を終えました。
次にアセットチームですが、彼らのメインイベントはモービウスとマイロの二人のキャラクターでした。ただ僕自身はこれらの開発に関わっておらず、彼らをショットでアニメートし、FXを足してライトを当て、レンダリングすることに注力しています。僕が担当したアセットはというと、例えばデジタルダブルや電車、ディティールが必要になる背景の一部などですが、特に注力したのはコウモリかも知れません。コウモリは最終的に群集としてHoudiniで表現されることになっていたので、近景用にヒーロー・バットをMayaで準備し、Mantraでレンダリングできるよう、簡易化した群集用のコウモリも距離に応じて3種類ほどHoudini上で準備しました。
強力なチームの後押しがあったお陰でアセットや背景が順調に仕上がり、途中からはライティングと、FXを助けることに注力することになりました。
ライティングに関しては、上司がNuke上ではなく、できる限り3D上でライティングを合わせることに重きを置く人だったので、デジタルドメインの他のプロジェクトでは詰め切らないところまで詰めました。特にモービウスや悪役のマイロは、多くの場合体は衣服を含めてプレートを流用し、頭部をCGに差し替えることが多かったので、徹底的に合わせました。環境光をまず合わせ、CGライトの方向性を合わせ、影の形や色を合わせ、ライトのサイズを微調整してスペキュラーの量やディティールを合わせました。作業が始まった当初は、このやり方でスケシュールが間に合うのかと心配したものですが、最終的にはスケジュールはもちろん、クオリティーにも対応でき、とても勉強になりました。今回の経験は、今後の一つの指標になると思います。
最後にFXです。煙や霧、雲、大気といった環境表現、ガンファイヤーや飛び散るデブリ(破片)等の一般的なものの他、キャラクターの高速移動を表現する際にリボン状に追従する軌跡のエフェクトや、コウモリのDNAから引き継いだエコーロケーションをエフェクトでビジュアル化する必要もありました。これは音の反響を利用して自分と物との距離や空間を知覚するものです。さらにモービウスはコウモリのように風に乗って空を飛び、仲間の(?)コウモリを自在に操ります。Mayaで作ったアセットやキャラクターとHoudiniで作るエフェクトを同じ空間に存在するように見せる必要があったので、ライティングを合わせ、モーションブラーを合わせ、Deep Imageを使ってホールドアウトを共有しました。FX部門もスーパーバイザーやリードがおり、それに加えてCGスーパーバイザーの一人が非常に優秀なFXアーティストであることもあって、コウモリの群衆やエコーロケーションを中心に複雑なFXは彼らが担当してくれてはいたのですが、さすがに物量が多すぎて、こちらで見れる分は分担する必要が出てきたのです。技術的にも難解なものが多かったので、最後の数か月はいつものようにライティングをチェックしつつ、FXにどれだけ時間が割けるかが勝負でした。
最近、ようやく映画を鑑賞したのですが、嬉しいことに後から見ても後悔のない仕上がりでした。仕事が終わった時もそう思ったのですが、余裕を持って仕上げた仕事は、余裕を持って観れますね。できる限りのことはしたと胸を張れるショットばかりなので、チームに感謝しつつ、今後もこういった仕事を続けていければと思います。
2022. 06/12